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狭心症・心筋梗塞 
 1.狭心症とは
 心臓はその表面を流れる冠状動脈という血管によって養われています。狭心症は、この冠状動脈が動脈硬化(粥腫)や血管の痙攣(攣縮)などで狭くなることにより、心臓を養う血液が足りなくなり発作的に胸が苦しくなる病気です。動脈硬化(粥腫)による狭窄があると、運動や力仕事など心臓がより多くの血液を必要としているときに、十分な血液が届かなくなります。このため胸痛が出現し、安静にすることで軽快します(労作性狭心症)。安静時や、歩行などのごく軽い運動をしただけで発作が出現する場合は、血管が詰まりかけていると考えられ、急性心筋梗塞に移行しやすい危険な状態です(不安定狭心症)。血管の痙攣が原因の場合は、運動に関係なく深夜や早朝の安静時に多く発作が出現します。この狭心症を放置すれば心筋梗塞を発症する恐れがあります。即ち、狭心症は心筋梗塞の前兆でもあり、いわば、心臓が教えてくれる貴重な危険信号なのです。


動脈硬化の破綻

 2.急性心筋梗塞とは
 冠動脈に生じた動脈硬化(粥腫)が破綻すると、その部分に血栓が形成され、冠動脈が閉塞してしまいます。心臓を栄養する血液が途絶することにより、心臓の筋肉が壊死してしまった状態を心筋梗塞と言います。心筋に壊死が起こると、心臓のポンプ機能が障害されるため、ショック状態や心不全に陥ったり、重篤な不整脈が出現することにより生命の危機にさらされます。また心筋梗塞では、壊死を起こした心筋の量によって重症度が異なります。つまり、冠動脈のより根元側(中枢側)が閉塞すると、障害を受ける心筋の範囲がより多くなり重症になります。また、血管が閉塞してから時間が経つに従い、壊死心筋の量が増えていきます。早期(30分以内)に血流が再開すれば心筋壊死は最小限に食い止められますが、3時間を超えると壊死心筋量は増え、12時間から24時間で閉塞血管が栄養していた心筋はすべて壊死してしまいます。壊死した心筋細胞は再生しないので、一分一秒でも早く、途絶した血流を再開することが重要です。治療のGolden timeは3時間以内です。
 3.冠危険因子とは
 狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患が発症しやすい状態を、冠危険因子といいます。@加齢A家族歴B喫煙C高血圧D肥満E耐糖能異常F脂質異常症GメタボリックシンドロームHストレスが挙げられます。その他、慢性腎臓病、うつ病、運動不足、女性の飲酒、魚・果物の摂取が少ない、ある種(家庭環境や勤務形態など)の社会的因子、閉塞型睡眠時無呼吸症候群でも冠動脈疾患を発症しやすく、既に脳梗塞や閉塞性動脈硬化症など他の動脈硬化性疾患がある場合は一層リスクが高くなります。上記のような因子がある場合は十分注意し、改善できる点はしっかり改善することが重要です。
 

 4.狭心症・急性心筋梗塞の症状とは
 狭心症では、特有な胸痛が発作的に出現します。痛みといっても鋭い痛みでなく、多くは圧迫感重苦しい感じ締つけられる感じなどと表現されます。糖尿病があると症状が全く無いこともあります。典型的には階段や坂道を登るとき、走ったり重いものを持ち上げたりといった労作時に起きます。排便、入浴、食事、興奮なども誘引になります。重症になったときや冠動脈の痙攣による狭心症の場合は安静時にも起きます。心臓というと左胸と考えがちですが、多くは胸の真中を中心に比較的広い範囲が苦しくなります。他に左肩、左腕、喉や顎、歯、上腹部、などが痛むことがあります。これを放散痛といい診断に役立ちますが、病気を見落とす一因にもなります。発作は通常30秒以上続き、安静にすることで5〜15分程度で軽快し30分以上続くことはありません。

 急性心筋梗塞では、狭心症と同様の胸痛がさらに強く、長時間続き(30分以上)、多く場合、冷汗や嘔気を伴います。治療を受けなくても、閉塞した冠動脈が自然に再開通すれば症状は軽快しますが、閉塞したたままでも急性期を生き延びることができれば、半日から1日程度で軽快します。しかしながら、この場合心機能低下などの重大な後遺症を残すことになり、慢性心不全や重篤な不整脈の原因になります。冠動脈が閉塞と再開通を繰り返す場合は、断続的な胸痛が数日間続くこともあります。ここでも、糖尿病の場合、胸痛を感じない場合があり注意が必要です。
 一方、狭心症や心筋梗塞の可能性が低い症状もあります。ズキズキやチクチクとした痛み、指でさし示せるほどの狭い範囲の痛み、あちこち移動する痛み、特定の姿勢や体をひねったり、咳や呼吸をすることで増悪する痛み、圧迫すると増悪する痛み等です。変化のない持続的な痛みが3日以上続く場合も否定的です。しかし、心配な症状がある場合は躊躇なく受診することが肝要です。

 5.診断のために行う検査とは
診断のために最も重要なことは、まず問診で症状を詳しく聞くことです。それにより、病状について多くの情報を得ることができます。症状から病気が疑われた場合は以下の検査を行います。心筋梗塞の場合は、心筋が壊死するので、心電図や心エコー、血液検査で診断することができます。狭心症では、発作時には特有な心電図変化が見られますが、発作時に検査を行うことは難しいため、運動などで心臓に負荷をかけて心電図変化を誘発します(負荷心電図、トレッドミル検査)。症状や心電図で狭心症が疑われた場合、冠動脈CTや心筋シンチグラフィ、あるいは心臓カテーテル検査などを行います。CTは冠動脈の形態を描出し、シンチグラフィは心臓に血流が足りているかを評価する検査です。最近の技術の進歩により診断能力は著しく向上し、危険も少なく通院で行えるため極めて有用な検査です。これらの検査で異常が認められた場合は、詳しい病状の評価や治療方針を決めるために、心臓カテーテル検査が必要になります。
 心臓カテーテル検査とは、カテーテルという直径2mm程の細い管を、手首や肘、鼠径部の動脈内に挿入し、心臓までその管を通して冠動脈に直接造影剤という薬を注入して、冠動脈の形態をレントゲンで撮影する検査です。冠動脈のどこが狭窄しているのか、CTでは評価が難しい部分でも明瞭に観察できますが、血管に管を通すという侵襲的な検査のため、必要性の高い場合にのみ行います。
  冠動脈MDCT
 
心臓カテーテル検査
 
        
 6.狭心症・心筋梗塞の治療とは
 狭心症の治療には大きくわけて以下の3つの方法があります。

 @薬物療法
血管拡張剤や抗血小板剤(血液をサラサラにする)が基本になりますが、動脈硬化の進展・再発を予防するために、ある種の降圧剤やコレステロールを低下させる薬も併用します。カテーテル治療や手術を行った後も継続が必要です。

 Aカテーテル治療
カテーテル検査と同様な方法で、冠動脈内に様々な器具を挿入し、狭窄部位を風船やステント(網状の金属の筒)で拡張する治療法です。手術に比べると侵襲が少なく繰り返し行えることが利点です。
 カテーテル治療(ステント留置)
 
血管の狭い部分までにステントを
のせたバルーンを進める
 
バルーンを膨らませてステントを
広げる
 
バルーンを抜去すると、ステントは血管を広げたままの状態でのこる
 
 B冠動脈バイパス術
胸の内側を通る動脈や下肢から採取した静脈を、狭窄部位より先の冠動脈に繋げることにより、閉塞部位を迂回する形で大動脈から末梢冠動脈に血液が流れるようにする手術です。狭窄部位が多数ある重症例やカテーテル治療のリスクが高い例で適応になります。
 以上の3つの方法を病状に応じて組み合わせることにより治療を行います。

心筋梗塞の場合は、なるべく早くカテーテル治療を行い、速やかに閉塞した血管の再開通を図ります(
再還流療法)。カテーテル治療が困難な場合は緊急バイパス術を行うこともあります。その後、集中治療室において全身管理、合併症への対応を行います。急性期治療後は、日常生活にむけて心臓リハビリテーションを行います。

以上です。心配な症状がある場合は、ご遠慮なく当院循環器内科外来にご相談ください。

循環器科部長
 岩崎 俊弥