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高血圧の話

高血圧症の知識としては、ウイキペディア等ネットにも多くの情報があり参照して頂くとして、ここでは医師が高血圧の患者さんを前にして最初に話すことから診察、検査、治療をどのように考え、実施しているかを記すことにします。

 高血圧症の発見:高血圧は血圧計が今は各家庭に一台所有していることが多く、検診等でも血圧測定して高いことで来院します。その時にきちっとした話をすることが今後の病気の予後を決めることになります。

 病歴聴取:先ず、病歴を聴きます。いつから血圧が高くなってきたか、これまでにどのような病気をしたか、家族には高血圧の患者がいるか、あるいは脳卒中等循環器系の病気はあるか、あるいはあったかを聴きます。
 その後に高血圧とはどのような病気かを含めた話をします。高血圧は大きく2種類に分類され、一次性高血圧(本態性高血圧)、と二次性高血圧があります。前者は本態性の意味からも原因が不明であり、後者は原因があり高血圧になっているということです。本態性高血圧は原因が不明とはいえ原因は多因子にわたり、ストレス、塩分、遺伝等が関与します。このタイプの高血圧は薬による治療が出来ます。後者は腎臓への血管が細くなっていたり、副腎に腫瘍があったりして生ずる高血圧であり、それ等の原因を取り除けば治る高血圧です。ですから本態性か二次性かの鑑別は重要で病歴からも推察します。また、この時に血圧とは何か、血圧が高いと何が悪いのかの話をします。詳細は略しますが、血圧には病院の診察室で測定する随意血圧、朝一番起床前の基礎血圧、数回深呼吸をした後の近似基礎血圧、更に家庭血圧があります。最近では家庭血圧の重要性が言われています。有名な白衣高血圧、仮面高血圧があることも少しは言及します。また血圧は測定する度に異なるのでその解釈を話します。高血圧では高い血圧にさらされている臓器で特に脳、心臓、腎臓、それに大動脈の臓器障害が生じ、突然死や半身麻痺のような状況になります。既に言及しましたが、二次性高血圧は治るが本態性高血圧は治すことは出来ません。残念ながら二次性高血圧は高血圧患者の1-2割で、残りは本態性高血圧です。ここがポイントです。8-9割もいる本態性高血圧患者は治すことは出来ませんが、薬でコントロールできます。ですので、世の中の高血圧患者さんは薬を服用しているのです。薬では治らないので当然一生血圧の薬を服用することになります。この時困ったことに、ほとんど患者さんは周囲の人の間違った話を信じており、血圧の薬を一端服用すると一生飲まなければならないので服用はしたくないような話をします。血圧の薬は高血圧を治すものではなく血圧をコントロールするもので、もし服用しなければ前述したような循環器系のアクシデントが早晩起こります。ちなみに、脳の血管が破裂する脳出血はほぼ100%抑制できます。

 診察:血圧測定はもちろんですが、頭の先から足の先まで診察します。血圧の高さは重要ですが、両手の脈をみたりお腹の血管雑音を聴診器で聴いたりします。足の血管の脈も診ます。詳細は略しますが、ここでも二次性高血圧の有無に注意を払います。

 検査:大きく4つに分けられます。1)血液、尿の検査2)生理的検査(頸動脈エコー、心臓エコー、腹部エコー)3)レントゲン(胸部写真、腹部のCT)4)眼科検査以上に加え、必要な場合補助的に24時間血圧測定のホルタ―血圧、手足の血圧を同時に測定するABI等を加えます。検査の目的は2つ。一つは二次性高血圧を否定すること、もう一つは現在の脳(眼底検査、頸動脈エコー)、心、胸部大動脈(胸部写真、心電図、心エコー)、腎(血液、尿検査)臓器障害の程度を知る目的です。腹部CTでは、腹部大動脈、腎動脈の血管や副腎の状態が診られます。これ等の検査は1日から2日で終了し、二次性高血圧の有無の診断と臓器状態を確認し、それと同時に血液、尿から糖尿病、高脂血症等の合併症も診断します。

 治療:二次性高血圧はその原因除去を行いますが、ここでは高血圧症の8-9割を占める一次性(本体性)高血圧の治療について述べます。治療は直ぐには開始しません。少なくも一月程度2-3回、出来れば家庭血圧のデータをみてから判断します。年齢、合併症等から血圧値の基準はありますが、おおよそ上(収縮期)140以下、下(拡張期)90以下を目指します。収縮期血圧、拡張期血圧の意味も説明し、両方の血圧を下げることの大切さ話します。治療薬(降圧剤)の種類は大変多く、患者の状況で選択しますが、現在の薬はほとんどが24時間以上の効果があり、朝1回の服用で済みます。繰り返しますが、高血圧は治る病気ではなく、コントロール出来る病気ですので一生服薬を原則的には続けて頂きます。ここでこれまでの経験から一つだけよく遭遇し、注意すべき女性の高血圧をあげておきます。それは女性の高血圧で更年期頃に発症するものです。更年期になると血圧がかなり動揺し、それが徐々に固定していく場合があります。これは、女性ホルモンの突然の欠如が血圧上昇と関連しており、ちょうどこの時期にコレステロールの上昇もみられ、血圧の薬やコレステロールの薬を服用させられている患者を時々みかけます。これは、あくまでも女性ホルモン欠乏からくるもので、ここでは詳細は略しますが、種々の更年期症状を含め女性ホルモン補充療法(HRT)により全て解決することがあります。

 経過観察:血圧を下げるのはゆっくりすることが大切です。降圧剤の1剤は約一月かけてその血圧推移をみる必要があり、その間、2-3回測定し充分下降していなければ同じ薬を増量するか、他の種類の1剤を追加投与します。多くの患者は1から3剤程度でコントロールされますが、中には更に追加投与しなければならない患者もおります。大事なことは、血圧のコントロール以外に臓器障害や合併症をどれだけ抑えているかの判断ですが、これには全てではありませんが、上記の検査を少なくも半年に1回は施行することです。
以上が高血圧の患者を診るときのおおよその流れですが、患者さんによっては更に詳細にあるいは簡略に話をしております。一読して頂ければ、医師が何を考えて治療にあたっているのかがお分かり頂けるのではないかと思っております。



理 事 長
 市川 秀一